山崎亮さんと訪ねる「コミュニティデザインの原点」世田谷区太子堂

■新着!山崎亮さんと訪ねる太子堂

 世田谷区太子堂2・3丁目地区で住民参加の修復型まちづくりを30年にわたり先導してきた梅津政之輔さん。
 その取り組みは、対話型で築くコミュニティデザインの原点でもあります。
 コミュニティデザイナーの山崎亮さんとともに、太子堂を訪れ、お話を伺いました。

太子堂のまち案内
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/049umedu/houmon.htm
・梅津さんインタビュー
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/049umedu/interview.htm

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
太子堂、住民参加のまちづくり 〜暮らしがあるからまちなのだ』
 2015年初春刊行予定

 現場で住民として奮闘してきた著者ならではの、熱い想いや悩みが綴られた渾身の力作。
 まちづくりとは何か、コミュニティとは何かを考えるために欠かせない一冊。

 <<コミュニティデザインの原点がここにある>>

  30年間にわたって
  地域の安心・安全を紡いできた修復型まちづくりは
  人と人をつなぐことでもあった
    解題:井上赫郎、延藤安弘、五十嵐敬喜
    推薦:卯月盛夫、延藤安弘、木下勇
       小磯盟四郎、寺内義典、中林一樹
          西村幸夫、林泰義、原昭夫
          森反章夫、吉川仁、山崎亮

目次やまえがき、出版を応援する会の事前予約、一般予約開始お知らせメールの登録は下記です。
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/kinkan/1412taisi/index.htm

広告

学芸セミナー『地方都市の再生戦略』(6/22、東京)&著者インタビュー公開!

〈転載・転送歓迎〉

◎『地方都市の再生戦略』著者インタビュー公開

 <川上光彦さんに聞く>
 地方都市の再生に取り組んできた実務家、研究者とともに本書をまとめられた編者に、本書の狙いをお聞きしました。
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/047kawa/index.htm

 <木谷弘司さんに聞く>
 都市交通、とくに駐車場から地方都市の再生に取り組んでおられる金沢市の行政マンに、本の狙いと駐車場の何が問題かをお聞きしました
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/047kawa/index_k.htm

◎『地方都市の再生戦略』出版記念セミナー@東京
  川上光彦、水野雅男、陣内雄次さん

 日 時:2013年6月22日(土)
    13:30開場、13:45〜16:15
 場 所:東京、千代田プラットフォームスクエア会議室505
 会 費:1000円、定員60名(先着順)

(詳細&申込)
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1306kaw2/index.htm

 本セミナーでは『地方都市の再生戦略』編者の川上光彦さんに本書にそって「多様な課題とその解決の方向」を紹介いただくとともに、とくに市民主体のアートまちづくり活動について水野雅男さんに、空き家や隙間を活用した自然発生的なの店舗とその連携の動きについて陣内雄次さんに解説頂きます。ふるってご参加ください。

○主なプログラム
 ・本書のねらい・概要
  川上光彦(金沢大学名誉教授)
 ・地方都市の課題と再生のための戦略
  川上光彦
 ・地方都市の歴史資産を活用する市民主体のアートプロジェクトまちづくり活動
  水野雅男(法政大学現代福祉学部教授)
 ・ソーシャルビジネスが店をつくり、街を変える
  陣内雄次(宇都宮大学教育学部教授)
 ・会場との意見交換
  終了後、交流会を予定

/////////////////////////////////////////////////////////////////
関連書籍
『地方都市の再生戦略』
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-3203-1.htm
都市を次世代に引き継ぐには何をなすべきか
/////////////////////////////////////////////////////////////////

『地方都市の再生戦略』著者インタビュー公開。東京セミナーは6.22です。

◎『地方都市の再生戦略』著者インタビュー公開

 <川上光彦さんに聞く>
 地方都市の再生に取り組んできた実務家、研究者とともに本書をまとめられた編者に、本書の狙いをお聞きしました。
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/047kawa/index.htm

 <木谷弘司さんに聞く>
 都市交通、とくに駐車場から地方都市の再生に取り組んでおられる金沢市の行政マンに、本の狙いと駐車場の何が問題かをお聞きしました
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/047kawa/index_k.htm

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◎『地方都市の再生戦略』出版記念セミナー@東京
                 川上光彦、水野雅男、陣内雄次さん

日時:2013年6月22日(土曜日)
   13時30分開場、13時45分開演〜16時15分頃まで
場所:東京、千代田プラットフォームスクエア会議室505
会費:1000円、定員60名(先着順)
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1306kaw2/index.htm

□主なプログラム
・本書のねらい・概要
  川上光彦(金沢大学名誉教授)
・地方都市の課題と再生のための戦略
  川上光彦
・地方都市の歴史資産を活用する市民主体のアートプロジェクトまちづく
 り活動
  水野雅男(法政大学現代福祉学部教授)
・ソーシャルビジネスが店をつくり、街を変える
  陣内雄次(宇都宮大学教育学部教授)
・会場との意見交換
・ 終了後、交流会を予定

<関連書>
『地方都市の再生戦略』(川上光彦編著)
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-3203-1.htm

著者に聞く『食と景観の地域づくり』/出版記念セミナー(4.20京都)

◎著者に聞く『食と景観の地域づくり』

 文化庁で文化的景観の制度の立ち上げに関わりった井上さん、農林水産省、外務省、国交省を経て現在、農業と栄養士&技術士として活躍中の染井さんに、本書の狙いをお聞きしました。

 −− 一部抜粋 −−
 私も地域のなかでなにかやっていこうというときに、1人ではできない。景観も、農業の人も関係しますし、一般の人も関係します。それを地域の一つの持続可能な産業として捉えようとすると、これも色々な方が連携していかないとできない。その連携する際の凝集力として食とか景観というのは、それぞれの地域にすんでおられる方の共通の体験でもあるわけですから、これを大事にして地域の連携の力を発揮してもらいたいなと思っています。
 ですから地域のすべての方にこういうことに関心をもっていただきたいな、と思っています(染井)
(全文は下記)
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/046ino/index.htm
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
◎出版記念セミナー

  食と景観の地域づくり 〜 小さな活動からネットワークへ
      報告:井上典子、染井順一郎、山田照夫、植野健治

□日時/場所/会費
 2013年4月20日(土曜日)
 13時開場、13時30分開演〜16時30分頃まで
 京 都/学芸出版社3階
 会 費/1000円、定員70名(先着順)
 交流会/終了後、同会場、1000円(キャンセル待ち)

□主なプログラム
「消費者に選ばれる産地づくり〜味には風景がある〜」  染井順一郎
「食と景観の地域づくり、その広がり」         井上典子
 休憩(オーガニック牛乳試飲会)
「日本初のオーガニック牛乳と鮭の遡上する景観」
              オーガニック牛乳生産農家 山田照夫
世界遺産と食の地域振興」平戸市教育委員会文化遺産課 植野健治
「パネルディスカッション&会場との議論」

詳細&申込
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1304inou/index.htm

参考図書
井上典子、染井順一郎著
『食と景観の地域づくり   小さな活動からネットワークへ』
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2547-7.htm

GreenTV   Japan  大和田順子さん、曽根原久司さんインタビュー

◎GreenTV Japan

「ソーシャルデザインカンファレンス2013 day1 地域創生」のためのインタビューです。

○大和田順子さんインタビュー
 コンクリートから送電線へ。ソーシャルキャピタル力と幸せ、といったお話

○学芸出版社の関連書
『アグリ・コミュニティビジネス
  〜農山村力×交流力でつむぐ幸せな社会』(大和田順子 著)
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1280-4.htm
『田舎の宝を掘り起こせ〜農村起業成功の10か条』
 (曽根原久司編、杉本淳、矢崎栄司著)
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2541-5.htm

大社充さんインタビュー『地域プラットフォームによる観光まちづくり』

〈転載・転送歓迎〉

【HPのご案内】

◎大社充さんのインタビューページができました。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「地域プラットフォームによる観光まちづくり」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

   ** 本書の狙いを聞く **

○地域にもマーケティングとマネジメントが必要

大社:
 国内の観光振興は、バブル崩壊以後、回復していませんよね。良い話が国内観光振興にはなくて、横ばいあるいは右肩下がりみたいな状況が続いています。なぜそうなるのか、どうしたら地域にお客さんが来てくれるのかを考えると、一つの課題として、地域が自らお客を集めなければいけなくなった状況というのがあります。従来であれば旅行会社にお客さん集めを任せていたのに、ごろっと変わってしまっているのです。

 ある意味、国内観光の主役は地域になっています。「着地型観光」という言葉も出てきていますが、まさに地域主導型の観光が現れ、それが主役になりつつあるのです。しかし、大きな問題は、地域自身が主体的かつ戦略的にお客を集める方法やノウハウを持ってないということです。

 これが一番の問題で、今や黙っていても客が来るという時代ではありませんので、地域自身が戦略的に自分たちの街にお客さんを集める仕組みやノウハウを持たないといけないのです。もちろん、今までのように旅行会社やいろんな外部組織に協力をしてもらうのは大事なのですが、それ以上に自分たち自身の戦略を持っていることが大事なのです。そういう時代になってきているのですね。

 そのための方法論が、日本にはありません。ですから、地域を一つの集客装置、たとえば東京ディズニーランドと見立てて、企業でやっているようなマーケティングの考え方を導入して考えてみました。

 その考え方を導入することで、不特定多数に向かって「来てね」と言うよりは、地域の特徴や地域資源を価値があると考えているマーケットに適切につなげることができます。日本の地方もそうしたことをやっていかなければいけないだろうと思います。

 そこで、地域振興型の観光振興を進めるためのマーケティングならびにそれを成果に結び付けるためのマネジメント、この2点に的を絞って本を書き上げました。これが、本書の執筆動機ですね。

 以下、次の内容のお話が続きます
○主体となるのはプラットフォーム型の観光まちづくり組織
○地域密着型の組織とともに広域のマーケティング組織が必要
○観光振興の成功のポイントは次の世代を育てること

★インタビュー全文はこちら
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/001ookoso/index2.htm

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

○関連書籍
『地域プラットフォームによる観光まちづくり 
  マーケティングの導入と推進体制のマネジメント』

—– 顧客志向で行き詰まりを打ち破る実践の手引 —–
いま、プラットフォーム型の観光まちづくり組織の顧客志向の取り組みが、従来の観光行政、観光協会の弱点を克服し成果をあげている。本書ではその組織のあり方、実践的なマーケティング手法、地域ぐるみで取り組む推進体制のマネジメントの仕組みを示す。地域の観光事業者、NPO観光協会、DMO、自治体関係者必読の書。

(詳細)http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2546-0.htm

大社充さん「地域プラットフォームによる観光まちづくり」

◎大社充さん「地域プラットフォームによる観光まちづくり」

       ** 本書の狙いを聞く **

○地域にもマーケティングとマネジメントが必要

大社:

 国内の観光振興は、バブル崩壊以後、回復していませんよね。良い話が国内観光振興にはなくて、横ばいあるいは右肩下がりみたいな状況が続いています。なぜそうなるのか、どうしたら地域にお客さんが来てくれるのかを考えると、一つの課題として、地域が自らお客を集めなければいけなくなった状況というのがあります。従来であれば旅行会社にお客さん集めを任せていたのに、ごろっと変わってしまっているのです。

 ある意味、国内観光の主役は地域になっています。「着地型観光」という言葉も出てきていますが、まさに地域主導型の観光が現れ、それが主役になりつつあるのです。しかし、大きな問題は、地域自身が主体的かつ戦略的にお客を集める方法やノウハウを持ってないということです。

 これが一番の問題で、今や黙っていても客が来るという時代ではありませんので、地域自身が戦略的に自分たちの街にお客さんを集める仕組みやノウハウを持たないといけないのです。もちろん、今までのように旅行会社やいろんな外部組織に協力をしてもらうのは大事なのですが、それ以上に自分たち自身の戦略を持っていることが大事なのです。そういう時代になってきているのですね。

 そのための方法論が、日本にはありません。ですから、地域を一つの集客装置、たとえば東京ディズニーランドと見立てて、企業でやっているようなマーケティングの考え方を導入して考えてみました。

 その考え方を導入することで、不特定多数に向かって「来てね」と言うよりは、地域の特徴や地域資源を価値があると考えているマーケットに適切につなげることができます。日本の地方もそうしたことをやっていかなければいけないだろうと思います。

 そこで、地域振興型の観光振興を進めるためのマーケティングならびにそれを成果に結び付けるためのマネジメント、この2点に的を絞って本を書き上げました。これが、本書の執筆動機ですね。

 以下、次の内容のお話が続きます
○主体となるのはプラットフォーム型の観光まちづくり組織
○地域密着型の組織とともに広域のマーケティング組織が必要
○観光振興の成功のポイントは次の世代を育てること

★インタビュー全文はこちら
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/001ookoso/index2.htm

★本はこちら
 「地域プラットフォームによる観光まちづくり
   〜マーケティングの導入と推進体制のマネジメント〜」
A5判・240頁・定価2730円(本体2600円)
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2546-0.htm

佐藤嘉一郎『楽しき土壁』自著を語る

http://gmark.jp/book/2227sato_tanoshiki/interview.htm
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1304-7.htm

まだまだ見ておきたかった“不思議な壁”

◎本をお出しになられて、今、どんな思いでいらっしゃいますか。

本の中身については、年は90歳になっているけれども、自分としては、まだまだ幼いね。本当に現場の話にすぎない。もう少し深く話せたかもしれん。

本書では、実際に見て回る建物を京都市内の5箇所に決めてしまったわけですが、もう少し見ておいたほうがよかったなと思うところもあります。

曼殊院左京区一乗寺)にも行きたかったね。曼殊院はちょっと赤みがかった壁です。書院のほうは、江戸時代初めの壁が残っている。お茶室のほうも、桃山土と呼ばれる土の錆が出てきているようです。ただ、あそこはとても暗くて見えにくいんですね。窓を開けたりして明るくして見てみたいね。あそこも不思議な壁やねん。

今回は行っていないところだと、待庵(京都府大山崎町)もいい壁です。塗り回しが絶妙やね。

あるいは、修学院離宮や、大宮御所にも古い茶室がある。そこの壁がどうなっているのかも見ておきたい。ここらはほとんど使っていないさかいに、わりに傷んでいないと思うので、比較的残っているやろうと思う。壁というものは、天皇が代わるときやお茶会をするときなどに、塗り替えていることが多いので、当初どんな壁だったのか、どんな塗り替えがされたのかは興味があります。

ただ、そこまで追求するなら、文献を調べないといけない。御所だと作事日記などが残っているはずですから、「いつごろ、どれくらいの職人が入って塗り替えた」などはわかるかなとは思います。そういう調べものもしてみたいなと思います。

そのような建物の壁を、きちんと比較して、深く追求するようなやり方もあったかもしれん。比較するともっと面白いかもしれんが、あまりに専門的な内容になりすぎるかもな。土壁入門者に読んでもらうには今のかたちでよかったと思います。

◎これまでのお仕事のなかで、思い出深いものをひとつ教えてください

すでに壊してしまったものですが、面白いなぁと思うのはありました。昭和15年ごろの駆け出しのころやったなぁ、仕事欲に憑かれて走っている最中のことやった。

ごく普通の町家で、株屋さん(証券会社)の社長さんの家でした。ただ、それは土壁塗りではなく、タイル張りの仕事やった。泰山焼(たいざんやき)という手焼きの民芸調のタイルです。

昭和10年ごろから、河井(寛次郎)さんなどの京都の民芸グループがさかんに使い出したやつやな。それは、大量生産ではなく、手づくりものです。たしか、大阪の「綿業会館」(昭和6年)に張ってあるやつが同じもので、それの細長いやつがあるねん。それを、洗面所や流しに張った仕事やったね。

若かったんやけど、「任せとくわ」と言われたさかい、凝って、菱型にカットして張っていったんや。その時分にはカッターがなくて、手でみな切っていたんです。「こつこつこつ」とタガネで切るんですが、ものすごく難しかった。裏から切ったり、表から切ったり、金きりのこぎりでやっても駄目やし……、苦労したな。でもなんとかやり遂げた。

ガラス棒をうまいこと使って、水がうまく流れてタイルが汚れない工夫をしたりして、われながらええ思案したなと思える仕事でした。

このお宅には、その後おつきあいも続いて、終戦後までもずっと「お出入り」で行かせてもらっていました。ちょうど、荒木さん(『町家棟梁:大工の決まりごとを伝えたいんや』)もお書きのように、そうじをやらせてもらったりね。いろんなことをやらせてもらいました。

“「手の跡」を見て、学んでほしい”

◎最近の若い人の仕事についてどう思いますか。

壁関係の雑誌もちょくちょく拝見したりしています。若い人が、大きな壁に壁画みたいにぐわーっとやっているのも見ています。左官の壁が、建築のいわば「看板」の役割を果たしているようなものもありますね。ようやっとると素直に思います。

「ああ、これはこうやったらできる」などと技術はわかりますが、私らがやってきた仕事では、そういうお施主さんはいなかった。そういうことにお金を出してくれるひとが少なかったんです。

私らは、お施主さん、設計者さんの注文に応じられる仕事を、きちんとできるようになるべきと思いますが、逆に、職人の腕を伸ばすような仕事も与えていただければ、とも思います。

保守的、伝統的な仕事を「ちょっとでもきれいに」「すこしでも安く」と言うだけではなく、思い切って新しい試みをさせてもらえるような、職人を思い切り伸ばすような仕事が増えるといいと思っています。そういう仕事があると、若い人も伸びていくからね。

◎これから学んでいくにあたって、何をどう勉強したらよいのでしょうか。

これ学べ、あれ学べということは言えませんが、過去の職人のええ仕事を見てほしい。ただ単に、削って、切って、くぎ打って、留めて、かたちだけつくって、壁塗った、と、そういう見方ではなく、「これをつくるにあたって、どういうふうにしたんやろう」「ひとつも隙間が見えへんのやけど、どうやってやっているのか」と。つまり、昔のひとが苦労して仕事をした「手の跡」を見て、学んでほしいんです。

壁でも、この本でもあるようにすぐ目のそばに行って見てほしい。それを感じてほしい。ちゃんと見たら、仕事でもそれに近いものが再生できるはず。見るのも漫然とみているのでは駄目です。そういう目を養うには……やっぱりたくさんみるということやな。たくさん見て、勉強して、記録を読んで、そして、自分で考えたうえで、実際に施工をして試してほしいと思います。

椎川忍さん「緑の分権改革」を語る

「緑の分権改革」を語る
椎川忍さんに、本書執筆への思い、その理念(ファウンテンモデル)、そして地方自治体への期待をお話いただきました。

http://www.gakugei-pub.jp/chosya/042siika/index.htm

○役所の報告書と違った、よく分かる本にしたかった

司会(前田):

 では早速、椎川さんに、本書の狙いやお気持ちを紹介していただきたいと思います。

椎川:
 いろいろ他にも書きたいことはありましたが、基本的には地域力創造とか地域おこしについての内容です。
 「緑の分権改革」というのは、原口総務大臣(当時)が言い出したことで、その時からこれは分かりにくいと言われてました。確かに題名としては分かりづらい所があると思います。しかし、中身をよく聞いていくと、昔から私どもも、いろんな学者の方も、あるいは地域の人たちも取り組んできた「あるものを生かす地域づくり」とか「地域力創造」といったことなんですね。ですから、副題には「あるものを生かす地域力創造」と付けました。
 「緑の分権改革」の広がりや考え方、あるいはこういう分野でもこういう考え方で取り組んだら緑の分権改革になるんだということを、みなさんに知っていただきたいと思っています。
 国の政策も、平成21年度に政権交代があって、補正予算が編成替えされた時に原口さんが総務大臣として、「緑の分権改革をやろう」ということで補正予算39億円が計上されたということがありました。そういうものが平成22年度の当初予算、その予算の成果が平成23年の春先に出てきて、段々と輪郭がはっきりしてきました。そして、「こういう風にやるんだ」「こういう分野のこういう取り組みも緑の分権改革なんだな」ということが徐々に世の中に伝わるようになってきました。「緑の分権改革」という本は、そうした時期にちょうど良いなと思って書き上げたと言うしだいです。
 俗に役所の報告書とは分厚くて読みにくいという部分がありますから、私としては分かりやすい解説を加えたりして、より分かりやすくに読んでもらおうと工夫したつもりです。
 それと緑の分権改革という政策が出てくる以前から、同じ考え方ですでに先行的な取り組みをしている地域がありました。
 例えば、岩手県葛巻町滋賀県東近江市、長野県の飯田市徳島県上勝町などもそうです。上勝町は葉っぱビジネスで有名ですが、実は「地域にあるものを全部資源として使っていこう」という姿勢でゼロエミッションや山の再生にも取り組んでおられます。そういう先駆的な事例を含めて紹介しています。

再生可能エネルギーが一つのポイント
 特に「再生可能エネルギー」が当時から大きく取り上げられていました。民主党マニフェストにも「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が盛り込まれていて、エネルギーの買取制度を導入するということもあったわけで、それを進めていく意味もあって原口総務大臣は予算を計上されて、総務省に本部や有識者会議を作って取り組みを進めてきたわけです。
 「再生可能エネルギー」の問題は、東日本大震災、福島の原発事故がありまして、みなさんが環境問題、エネルギー問題に目を向けるようになったと思います。これまでは効率優先だけで安い物を大量に作って、電気であれば配電する、物であれば全国に配送できるシステムが一番良いんだということで、経済成長や発展を求めてやってきました。しかし振り返って考えてみると、それだけで本当に良いんだろうかと思いながら近年生活してきたわけなんだけれど、それが何であったかははっきりとは分からなかった。しかし、今回の震災、原発事故によって「ああ、こういうことだったんだ」とはっきり認識されたのではないでしょうか。
 私達は「どこにでもある土地、水、太陽」から生み出せる再生可能エネルギーがせっかくあるのに、「原子力が安いし効率的だ」と大量に電気を作って文明生活を送ってきました。電気をふんだんに使って夜も昼と見間違えるばかりの生活が文明社会なんだと思って生活してきたけれど、どうもそれは違うんじゃないかと最近思い始めていたところじゃないかと思うんですね。そうした生活がおかしいということがはっきりして、もっと大事なことがあったんじゃないかと思い始めたのだと思うんです。
 自分たちの今が良ければいいのではなく、将来の日本列島に住む我われの子孫もちゃんと電気が使えるようにサステイナブルなシステムを作っていくことの方が大事なんじゃないか。あるいはせっかくあるものを有効に使って、それを生活の糧にして地域の活力の源にしていく、経済のもとにしていく、そうした考え方をもう一度取り戻してみよう。そういう考え方が理解されたんだと思うんです。
 それで法律も、震災後に国会で修正協議が整って、「再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度」ができ、いよいよ今年の7月から本格的に動いていく予定です。

○元気があちこちからわき上がってくるファウンテンモデルを目ざす

 そうした動きが他の分野にもいっぱいあると思うんです。昔、それぞれの地域で経済の循環の中で役割を果たして富を生み出して、地域の活力を生み出してきたものが、市場原理を尊重するあまり、また自由主義を尊重するあまり、疲弊してきた。中心市街地の商店街もそうでしょうし、多くの酒蔵が地域でつぶれていったのも同じことでしょう。あるいは地場産業の衰退もそうです。せっかくある町並みや古民家が朽ち果てていく現状もあります。いろんな所に目を向けていくと、せっかくある良い物が力を発揮できなくなっている、経済の循環から外れてしまっていること分かります。
 こうした経済の循環の中から外れてきているものをみんなで取り戻したい。取り戻す時に、補助金ではなくて経済・社会のシステムを変えることによって取り組もうということです。国民合意を得て、法律を変えて経済・社会のシステムをちょっと変革することによって、それらが富や活力を生み出すもとになれば、これは一極集中とか、それによるトリクルダウン〜どこか一部だけが非常に頑張って、そこに集中投資をして、それ以外はそのおこぼれで生きていく〜のではなくて、地域のそれぞれがそれぞれの特色を生かしながら、あちこちから富がわき上がるように、元気がわき上がってくるようなファウンテンモデル型の日本をつくろうという政策理念なんです。
 ですから、非常に幅が広いし、横串の政策理念なんです。ただそれぞれの分野で自分たちが何をしたらいいのか、地域の人たちが何に取り組んだらいいのかということと、その取り組みに対して国が補助金行政ではなくて社会・経済システムを変えるために、どういう制度を導入したらいいのかを考えることが必要です。どういう制度を導入したら良いのか、今までの制度をどのように変えればいいのか、そういうことをきちんと探求して国民合意にしていくことが必要です。
 これは時間はかかりますけれど、先ほど申し上げたように今は文明の転換点みたいな所にありますから、多くの人たちがそれに気がつき始めています。再生可能エネルギーの問題だけではなくて、いろんな分野でみなさんの知恵を出していただいて、日本は日本らしい、アジアはアジアらしい発展方策があるはずだという考え方、この「内発的発展論」を唱えたのは上智大学鶴見和子先生ですが、そういう考え方に従ってすすめる。
 しかも今はこういう情報化社会でインフラも相当整備されていますから、内発的に限ることはありません。内発的なものを大切にしながら、外部から人材やノウハウを取り込んだりすることが簡単にできるようになりました。私はこれを明治大学の小田切先生と一緒に「ネオ内発的発展論」と呼んでいます。要するに内発的発展を基本にするけれども、外部からも人材やノウハウ、資本を取り込んでいけばいいという考え方で、今後の地域力創造や地域づくりをみんなでやっていきませんかということです。
 そのための方策や考え方を紹介するとともに、地域の実例を紹介したのが今回の『緑の分権改革』という本です。これを読むことでみなさんが、「緑の分権改革って難しいことかと思っていたけれど、こういうことなら我われも頑張れるよ」と思って下さればいいと思っております。

○政策理念はさらに進化中

司会:
 読ませていただくとかなり哲学的と言いますか、深い考えをお書きになっていると思います。これは、椎川さん個人のお考えなのでしょうか。それとも政策そのものの中心にしっかりあって、共有されているものなんでしょうか。

椎川:
 新しい政策理念なので、人によって理解の仕方が違うという面がありますし、違っていてもいいのだろうと思います。
 少なくとも私の場合は、初代の地域力創造審議官になって最初のテーマは「定住自立圏構想」という政策、これもファウンテンモデルですが、地域のそれぞれが中心となる核をもちながら、周辺の市町村も連携して発展していこうという政策を制度化することでした。 次に鳩山総理大臣のときに「自然との共生」ということが言われ、京都の国際日本文化研究センター安田喜憲先生と知り合いました。この方は梅原猛さんのお弟子さんで、環境考古学が専門の方です。世界の文明がどうやって山の木を切ってきたかを花粉分析で調べ世界的業績を上げた方ですが、文明論的な展開をしておられる訳です。そうした方とお話しをしてきました。
 また、さきほど言いました「内発的発展論」を小田切先生や大森先生と議論する機会も得ました。ベネッセの福武さんの考え方もそうしたものに近いものがありました。瀬戸内海の直島や手島が自給できる島にしていきたいと言われ、あるいは人間の幸福感といったことをお話しされています。これは本にも紹介させていただきました。
 そうした方々に有識者会議に入っていただいて、いろいろディスカッションしていくうちに、私の考え方も固まってきたという面があると思います。当然有識者の意見も踏まえていますけれども、新しい政策であるだけに理念の中核の所は私が最初に手を染めています。今は担当を離れていますが、同じ総務省の中で次の人が地域力創造審議官として担当されていますから、常々話もしていますし、私にとってはライフワーク的なものとしてこの「緑の分権改革」の基本理論を深めてきましたし、これからも深めていきたいと思っています。それにあたっては、いろんな人とお話をさせてもらっています。

○これから地方自治体に考えて欲しいこと

司会:
 もう一点うかがいます。「時間がかかる」というのはよく分かりますし、どうしても大きな補助金が動く事業と比べると目立たない、動きがよく見えないというところがありますが、今後どのくらいのスパンで「緑の分権改革」を考えていけばいいのでしょうか。またその時、地方自治体の方々のことがキーなるのですが、どのくらい積極的に受け止めていらっしゃるのでしょうか。

椎川:
 そこなんですよね。平成21年度の補正からやってきて、もう3年間国の予算を付けて委託事業としていろんな事例を発掘したり、実証調査をやったりしています。再生可能エネルギーの場合ですと、平成21年度の第2次補正でかなり大々的に賦存量調査事業や利用可能量調査もやりました。それ以降、3年間国費を地方に委託する形でやってきました。
 しかし、これが本当に地方に理解されているかどうかは問題です。地方自治体はこの50〜60年補助金行政に慣れていますから、委託事業は全部国費でやってもらえるから有り難いという、いわば現世御利益的に言えば100%の補助金みたいに考えて申請してきた所もないとは言えません。
 ですが、これは補助金行政ではないのですから、いつまでも同じような類型のことにお金を出し続けることはあり得ないのです。今、財務省ともいろいろ議論しているようですが、平成24年度の予算はちょっとこれまでとは趣の変わった条件、たとえば条件不利地域で「緑の分権改革」をどうやったらよいのか、再生可能エネルギーはどこでもやれますが、それ以外にどうなんだとか、あるいは横で同じような課題に取り組む自治体をつないでプラットフォームを作るとか、アドバイザーを派遣する制度を作るとか、少し違った展開、いや予定された展開になりつつあります。
 ということは、いよいよ次のテーマに移っていこうとしているのです。再生可能エネルギーだけでなく、いろんなテーマについて、本当に国民の合意に基づいて社会・経済の仕組みを変えられるかというところに来ていると思いますので、今まで以上に自治体の方にそういう意識で取り組んでもらいたいと思います。制度を変えるための提案をたくさんしてもらわないといけない時期に来ていると私は考えています。それができないと、今までの補助金行政でやってきたものと結果としてあまり変わりがないものになってしまいます。そこのところを本書でも強調しているつもりですし、ぜひ取り組まれる自治体の方々には考えていただきたいと思います。
 そして、もう一点難しいところを上げておくと、実はこれはほとんどが各省の仕事なんです。再生可能エネルギー経産省の仕事ですし、教育分野の緑の分権改革として高等教育システムのことを私は強調していますが、これは文科省の皆さんの仕事です。農林業農林水産省。ただし、農林水産省はもともとそういう考え方を持っていて、すでに六次産業化法とか木材利用促進法だとか、いろんな法律を作ってやっていますから、それを加速すればいいという所まで来ています。この分野はベクトルとしてはかなり良いところまで来ていますので、地方自治体の方からどんどん提案していくことでやっていけるんじゃないかと思いますよ。しかし、まだ手が付けられていない教育分野などは、総務省としてこれからもっと積極的に提言していく活動が必要になると思っています。

司会:
 どうもありがとうございました。

緑の分権改革: あるものを生かす地域力創造

緑の分権改革: あるものを生かす地域力創造

椎川忍さんインタビュー掲載、山崎亮「 NHK 未来塾」ワークショップ参加者募集(2,28宮城)

◎椎川忍さん『緑の分権改革〜あるものを生かす地域力創造』を語る
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/042siika/index.htm

 椎川忍さんに『緑の分権改革』について語っていただきました。
 短いですが「これから地方自治体に考えて欲しいこと」という項目は、本にはあまり書かれていない事柄です。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
NHK東北発!未来塾 第一回「夢を描くチカラ」

4月から始まる新番組、「東北発未来塾」では「未来塾入学式」への一日参
加者を募集中。山崎亮さんの講義やワークショップ、参加者同士の交流、被災地訪問などを通して、参加者1人1人が「10年後の東北をプラニング」します。(3月教育テレビで放映予定)

石巻専修大学(集合は仙台駅)
・2月28日10時〜17時(申込み締め切りは2月23日)
http://www.nhk.or.jp/ashita/support/miraijuku/
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○当社関連図書
椎川忍『緑の分権改革〜あるものを生かす地域創造http://bit.ly/q9dHaa
○当社関連図書
山崎 亮「コミュニティデザイン」http://bit.ly/egPi5s
    「つくること、つくらないこと」http://bit.ly/s5zVGH(発売間近)

椎川忍氏『緑の分権改革』を語る

◎『緑の分権改革』を語る

椎川忍さんに、本書執筆への思い、その理念(ファウンテンモデル)、そして地方自治体への期待をお話いただきました。聞き手:前田裕資(編集部)

http://www.gakugei-pub.jp/chosya/042siika/index.htm

椎川忍 氏

総務省自治財政局長(前 地域力創造審議官(初代))四日市高校から東京大学法学部卒業。総務省財政課長、内閣府総務省の官房審議官、自治大学校長など。県勤務は、埼玉、香川、宮崎(財政課長)、島根(総務部長)。地域に飛び出す公務員ネットワーク代表、国際日本文化研究センター共同研究員など。共著に『地域旅で地域力創造〜観光振興とIT活用のポイント』。

○役所の報告書と違った、よく分かる本にしたかった

司会(前田):

 では早速、椎川さんに、本書の狙いやお気持ちを紹介していただきたいと思います。

椎川:

 いろいろ他にも書きたいことはありましたが、基本的には地域力創造とか地域おこしについての内容です。

 「緑の分権改革」というのは、原口総務大臣(当時)が言い出したことで、その時からこれは分かりにくいと言われてました。確かに題名としては分かりづらい所があると思います。しかし、中身をよく聞いていくと、昔から私どもも、いろんな学者の方も、あるいは地域の人たちも取り組んできた「あるものを生かす地域づくり」とか「地域力創造」といったことなんですね。ですから、副題には「あるものを生かす地域力創造」と付けました。

 「緑の分権改革」の広がりや考え方、あるいはこういう分野でもこういう考え方で取り組んだら緑の分権改革になるんだということを、みなさんに知っていただきたいと思っています。

 国の政策も、平成21年度に政権交代があって、補正予算が編成替えされた時に原口さんが総務大臣として、「緑の分権改革をやろう」ということで補正予算39億円が計上されたということがありました。そういうものが平成22年度の当初予算、その予算の成果が平成23年の春先に出てきて、段々と輪郭がはっきりしてきました。そして、「こういう風にやるんだ」「こういう分野のこういう取り組みも緑の分権改革なんだな」ということが徐々に世の中に伝わるようになってきました。「緑の分権改革」という本は、そうした時期にちょうど良いなと思って書き上げたと言うしだいです。

 俗に役所の報告書とは分厚くて読みにくいという部分がありますから、私としては分かりやすい解説を加えたりして、より分かりやすくに読んでもらおうと工夫したつもりです。

 それと緑の分権改革という政策が出てくる以前から、同じ考え方ですでに先行的な取り組みをしている地域がありました。

 例えば、岩手県葛巻町滋賀県東近江市、長野県の飯田市徳島県上勝町などもそうです。上勝町は葉っぱビジネスで有名ですが、実は「地域にあるものを全部資源として使っていこう」という姿勢でゼロエミッションや山の再生にも取り組んでおられます。そういう先駆的な事例を含めて紹介しています。

再生可能エネルギーが一つのポイント

 特に「再生可能エネルギー」が当時から大きく取り上げられていました。民主党マニフェストにも「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」が盛り込まれていて、エネルギーの買取制度を導入するということもあったわけで、それを進めていく意味もあって原口総務大臣は予算を計上されて、総務省に本部や有識者会議を作って取り組みを進めてきたわけです。

 「再生可能エネルギー」の問題は、東日本大震災、福島の原発事故がありまして、みなさんが環境問題、エネルギー問題に目を向けるようになったと思います。これまでは効率優先だけで安い物を大量に作って、電気であれば配電する、物であれば全国に配送できるシステムが一番良いんだということで、経済
長や発展を求めてやってきました。しかし振り返って考えてみると、それだけで本当に良いんだろうかと思いながら近年生活してきたわけなんだけれど、それが何であったかははっきりとは分からなかった。しかし、今回の震災、原発事故によって「ああ、こういうことだったんだ」とはっきり認識されたのではないでしょうか。

 私達は「どこにでもある土地、水、太陽」から生み出せる再生可能エネルギーがせっかくあるのに、「原子力が安いし効率的だ」と大量に電気を作って文明生活を送ってきました。電気をふんだんに使って夜も昼と見間違えるばかりの生活が文明社会なんだと思って生活してきたけれど、どうもそれは違うんじゃないかと最近思い始めていたところじゃないかと思うんですね。そうした生活がおかしいということがはっきりして、もっと大事なことがあったんじゃないかと思い始めたのだと思うんです。

 自分たちの今が良ければいいのではなく、将来の日本列島に住む我われの子孫もちゃんと電気が使えるようにサステイナブルなシステムを作っていくことの方が大事なんじゃないか。あるいはせっかくあるものを有効に使って、それを生活の糧にして地域の活力の源にしていく、経済のもとにしていく、そうした考え方をもう一度取り戻してみよう。そういう考え方が理解されたんだと思うんです。

 それで法律も、震災後に国会で修正協議が整って、「再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度」ができ、いよいよ今年の7月から本格的に動いていく予定です。

○元気があちこちからわき上がってくるファウンテンモデルを目ざす

 そうした動きが他の分野にもいっぱいあると思うんです。昔、それぞれの地域で経済の循環の中で役割を果たして富を生み出して、地域の活力を生み出してきたものが、市場原理を尊重するあまり、また自由主義を尊重するあまり、疲弊してきた。中心市街地の商店街もそうでしょうし、多くの酒蔵が地域でつぶれていったのも同じことでしょう。あるいは地場産業の衰退もそうです。せっかくある町並みや古民家が朽ち果てていく現状もあります。いろんな所に目を向けていくと、せっかくある良い物が力を発揮できなくなっている、経済の循環から外れてしまっていること分かります。

 こうした経済の循環の中から外れてきているものをみんなで取り戻したい。取り戻す時に、補助金ではなくて経済・社会のシステムを変えることによって取り組もうということです。国民合意を得て、法律を変えて経済・社会のシステムをちょっと変革することによって、それらが富や活力を生み出すもとになれば、これは一極集中とか、それによるトリクルダウン〜どこか一部だけが非常に頑張って、そこに集中投資をして、それ以外はそのおこぼれで生きていく〜のではなくて、地域のそれぞれがそれぞれの特色を生かしながら、あちこちから富がわき上がるように、元気がわき上がってくるようなファウンテンモデル型の日本をつくろうという政策理念なんです。

 ですから、非常に幅が広いし、横串の政策理念なんです。ただそれぞれの分野で自分たちが何をしたらいいのか、地域の人たちが何に取り組んだらいいのかということと、その取り組みに対して国が補助金行政ではなくて社会・経済システムを変えるために、どういう制度を導入したらいいのかを考えることが必要です。どういう制度を導入したら良いのか、今までの制度をどのように変えればいいのか、そういうことをきちんと探求して国民合意にしていくことが必要です。

 これは時間はかかりますけれど、先ほど申し上げたように今は文明の転換点みたいな所にありますから、多くの人たちがそれに気がつき始めています。再生可能エネルギーの問題だけではなくて、いろんな分野でみなさんの知恵を出していただいて、日本は日本らしい、アジアはアジアらしい発展方策があるはずだという考え方、この「内発的発展論」を唱えたのは上智大学鶴見和子先生ですが、そういう考え方に従ってすすめる。

 しかも今はこういう情報化社会でインフラも相当整備されていますから、内発的に限ることはありません。内発的なものを大切にしながら、外部から人材やノウハウを取り込んだりすることが簡単にできるようになりました。私はこれを明治大学の小田切先生と一緒に「ネオ内発的発展論」と呼んでいます。要するに内発的発展を基本にするけれども、外部からも人材やノウハウ、資本を取り込んでいけばいいという考え方で、今後の地域力創造や地域づくりをみんなでやっていきませんかということです。

 そのための方策や考え方を紹介するとともに、地域の実例を紹介したのが今回の『緑の分権改革』という本です。これを読むことでみなさんが、「緑の分権改革って難しいことかと思っていたけれど、こういうことなら我われも頑張れるよ」と思って下さればいいと思っております。

○政策理念はさらに進化中

司会:

 読ませていただくとかなり哲学的と言いますか、深い考えをお書きになっていると思います。これは、椎川さん個人のお考えなのでしょうか。それとも政策そのものの中心にしっかりあって、共有されているものなんでしょうか。

椎川:

 新しい政策理念なので、人によって理解の仕方が違うという面がありますし、違っていてもいいのだろうと思います。

 少なくとも私の場
は、初代の地域力創造審議官になって最初のテーマは「定住自立圏構想」という政策、これもファウンテンモデルですが、地域のそれぞれが中心となる核をもちながら、周辺の市町村も連携して発展していこうという政策を制度化することでした。 次に鳩山総理大臣のときに「自然との共生」ということが言われ、京都の国際日本文化研究センター安田喜憲先生と知り合いました。この方は梅原猛さんのお弟子さんで、環境考古学が専門の方です。世界の文明がどうやって山の木を切ってきたかを花粉分析で調べ世界的業績を上げた方ですが、文明論的な展開をしておられる訳です。そうした方とお話しをしてきました。

 また、さきほど言いました「内発的発展論」を小田切先生や大森先生と議論する機会も得ました。ベネッセの福武さんの考え方もそうしたものに近いものがありました。瀬戸内海の直島や手島が自給できる島にしていきたいと言われ、あるいは人間の幸福感といったことをお話しされています。これは本にも紹介させていただきました。

 そうした方々に有識者会議に入っていただいて、いろいろディスカッションしていくうちに、私の考え方も固まってきたという面があると思います。当然有識者の意見も踏まえていますけれども、新しい政策であるだけに理念の中核の所は私が最初に手を染めています。今は担当を離れていますが、同じ総務省の中で次の人が地域力創造審議官として担当されていますから、常々話もしていますし、私にとってはライフワーク的なものとしてこの「緑の分権改革」の基本理論を深めてきましたし、これからも深めていきたいと思っています。それにあたっては、いろんな人とお話をさせてもらっています。

○これから地方自治体に考えて欲しいこと

司会:

 もう一点うかがいます。「時間がかかる」というのはよく分かりますし、どうしても大きな補助金が動く事業と比べると目立たない、動きがよく見えないというところがありますが、今後どのくらいのスパンで「緑の分権改革」を考えていけばいいのでしょうか。またその時、地方自治体の方々のことがキーなるのですが、どのくらい積極的に受け止めていらっしゃるのでしょうか。

椎川:

 そこなんですよね。平成21年度の補正からやってきて、もう3年間国の予算を付けて委託事業としていろんな事例を発掘したり、実証調査をやったりしています。再生可能エネルギーの場合ですと、平成21年度の第2次補正でかなり大々的に賦存量調査事業や利用可能量調査もやりました。それ以降、3年間国費を地方に委託する形でやってきました。

 しかし、これが本当に地方に理解されているかどうかは問題です。地方自治体はこの50〜60年補助金行政に慣れていますから、委託事業は全部国費でやってもらえるから有り難いという、いわば現世御利益的に言えば100%の補助金みたいに考えて申請してきた所もないとは言えません。

 ですが、これは補助金行政ではないのですから、いつまでも同じような類型のことにお金を出し続けることはあり得ないのです。今、財務省ともいろいろ議論しているようですが、平成24年度の予算はちょっとこれまでとは趣の変わった条件、たとえば条件不利地域で「緑の分権改革」をどうやったらよいのか、再生可能エネルギーはどこでもやれますが、それ以外にどうなんだとか、あるいは横で同じような課題に取り組む自治体をつないでプラットフォームを作るとか、アドバイザーを派遣する制度を作るとか、少し違った展開、いや予定された展開になりつつあります。

 ということは、いよいよ次のテーマに移っていこうとしているのです。再生可能エネルギーだけでなく、いろんなテーマについて、本当に国民の合意に基づいて社会・経済の仕組みを変えられるかというところに来ていると思いますので、今まで以上に自治体の方にそういう意識で取り組んでもらいたいと思います。制度を変えるための提案をたくさんしてもらわないといけない時期に来ていると私は考えています。それができないと、今までの補助金行政でやってきたものと結果としてあまり変わりがないものになってしまいます。そこのところを本書でも強調しているつもりですし、ぜひ取り組まれる自治体の方々には考えていただきたいと思います。

 そして、もう一点難しいところを上げておくと、実はこれはほとんどが各省の仕事なんです。再生可能エネルギー経産省の仕事ですし、教育分野の緑の分権改革として高等教育システムのことを私は強調していますが、これは文科省の皆さんの仕事です。農林業農林水産省。ただし、農林水産
はもともとそういう考え方を持っていて、すでに六次産業化法とか木材利用促進法だとか、いろんな法律を作ってやっていますから、それを加速すればいいという所まで来ています。この分野はベクトルとしてはかなり良いところまで来ていますので、地方自治体の方からどんどん提案していくことでやっていけるんじゃないかと思いますよ。しかし、まだ手が付けられていない教育分野などは、総務省としてこれからもっと積極的に提言していく活動が必要になると思っています。

司会:

 どうもありがとうございました。

西村幸夫さん『証言・まちづくり』を語る、地域自治シンポジウム(11.25 豊田市)

著者インタビューのご案内
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
■西村幸夫さん『証言・まちづくり』を語る
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/040nisi/index.htm

今までまちづくりをひっぱってきたリーダー達の生の声を聞き、その人間的魅力にふれることの意味をお話いただきました。

若い人たちにむけた「その大きな構想と自分たちがやっている小さな現実性・可能性みたいなものをうまくバランスさせていく必要」を強調されていたのが印象的でした。

『証言・まちづくり』
http://bit.ly/sQGo8R
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
地域自治シンポジウム(豊田市

平成23年11月25日(金曜日)
午後1時〜午後4時。豊田市コンサートホール
詳細&申込み(豊田市
http://bit.ly/sD5gVz

 豊田市の「地域自治システム」について紹介すると同時に、豊田市の取組を題材に、これからの地域自治を考えるきっかけの場にする。

・第1部 地域自治システム紹介映像
 「豊田市の地域自治システムの仕組みと実践事例紹介」
・第2部 基調講演
 「豊田市の地域自治システムの評価と今後の可能性」
  大森彌氏《東京大学名誉教授》
・第3部 パネルディスカッション
 「豊田市の取組から見るこれからの地域分権のあり方」
 ◇パネリスト
 椎川忍氏《総務省自治財政局長》
 堀晨雄氏《豊南地域会議会長》
 釘宮順子氏《フリースペースK代表》
 中野正則《豊田市 社会部 地域支援担当専門監》
 ◇コーディネーター、大森彌氏

参考)
椎川忍『緑の分権改革』http://bit.ly/sAsSXf
中川幾郎編著『コミュニティ再生のための地域自治のしくみと実践』
http://bit.ly/mfevfv

*************************************************

椎川忍「緑の分権改革〜あるものを生かす地域力創造」
http://bit.ly/q9dHaa
都市計画学会関西支部「都市・まちづくり学入門」
http://bit.ly/oLFuvr

「にぎわいを呼ぶイタリアのまちづくり」を語る(宗田好史さん)

皆様

【著者に聞く】宗田好史さん
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
10年前に書かれたイタリア研究の本を振り返りながら、日本の田舎を再生してゆくために、イタリア研究が生かせないか、次の課題として取り組みたいと語られました
本書は品切れ中ですが、近々電子書籍で復刊予定です。また次作はもうすぐ原稿完成です。
http://www.gakugei-pub.jp/chosya/006mune/index04.htm

・セミナー記録「イタリア世界遺産物語〜人々が愛したスローなまちづくり〜」
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1008mune/index.htm
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
宗田好史さんの本
『創造都市のための観光振興』
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1267-5.htm
『町家再生の論理』
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2451-7.htm
『中心市街地の創造力』
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-3159-1.htm
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<第四回>3.11と防災コミュニティを語り合う集い
みんなで検証!建築ワークショップ
〜1/100サイズの敷地模型をさわって考えよう!
          防災コミュニティセンターのカタチ。〜
開催日時 9月10日(土)18:00〜21:00
詳細&申込み
http://yanakabousai.jimdo.com/
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○季刊まちづくり32号(9.1発売)
『全ページ東日本大震災対応特集号』
【定価1680円(税込み)/B5判/128頁】
http://www.gakugei-pub.jp/zassi/index.htm

○『[東日本大震災原発事故] 復興まちづくりに向けて』好評発売中
A5,240P,1800+税
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1289-7.htm

「都市交通戦略のあり方」を語る(中村文彦氏)

「都市交通戦略のあり方」を語る

『都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ』に寄稿いただいた中村文彦さんに、主題とされたモビリティデザインについてお聞きしました。交通システムは作っておしまいではなく、使われることが大切というお話は印象的でした。
聞き手:前田裕資(編集部)

http://www.gakugei-pub.jp/chosya/039naka/index.htm

中村文彦氏
横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院教授。62年新潟市生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業、同大学院修士課程修了。工学博士。東京大学助手、アジア工科大学助教授、横浜国立大学助教授を経て、04年より教授、11年より現職。都市交通計画、交通施設計画、開発途上国の都市計画などを専門とする。

■建築系の読み手の方にも分かりやすく書きました

前田:

 このたび、『都市計画 根底からの見直し、新たな挑戦へ』という本の中で、交通政策について中村先生にお書き頂きました。その狙いと、特にどういう人にどういう気持ちで読んで欲しいと考えていらっしゃるのか、お話し頂きたいと思います。

中村:

 今回、蓑原先生からお誘い頂いて、交通の章を書かせて頂きました。私は東大の都市工学科を出て、ずっと交通の勉強をして、今は横浜国大の土木系にいますが、交通は土木、あとは建築の担当だとする縦割りの風潮にずっと違和感を感じています。

 別に技術の違いもあるから、それでもいいと割り切ることもできるのですが、土木と建築の間にある「壁」が、いろんな物事を歪めているという感覚がいつもあります。交通はもう別の世界の話だから、そっちで勝手にやってねという形で仕事が割り振られるのもイヤだし、逆に僕らの方も建物の並びなどまちづくりに関することに物が言えなくなっているのも変だと思うのです。本来は相互につながっているものでしょう。

 今回の本は、おそらく建築系の読み手の人の方が多いだろうと思っています。ですから、建築系の読者を念頭に原稿を書きました。普通の交通の教科書なら、いきなり需要の予測が出てきたりモデル式が出てきたり、慣れない専門用語が出てくるのですが、今回の原稿ではそういうことを排除して、交通の物の見方、特に都市での交通の見方を中心に置いています。交通は都市での活動と大きく関係しているのだということをまず書きたかったのです。

■空間のディテールの設計も含め、モビリティデザインも重要なのです

 それから、交通の専門家は都市の再開発や土地利用計画、地区計画など計画畑のことだけやっていればいいのではなくて、もう一段アーバンデザインに近い話で、ディティールの設計の話も交通の話と極めて近いだろうと思っています。一般には交通のイメージは、都市圏の中でのマクロ的な移動、例えば東京都と横浜の間をどれくらいの人が動くかというイメージで捉えられています。それを支えているのは、横浜の駅であり鉄道システムであり駅の周りのデザインで、そういう一つ一つの要素が繋がって人々の活動を作り上げ、それが動きとなり、交通となっているのです。そのつながり方を見ようということで、「モビリティデザイン」という言葉をわざと入れてみました。

 「モビリティデザイン」は、アーバンデザインをする人が見た目の様子だけでなく、人々の生活を設計していることに加え、生活の先に人々の動きがあることを踏まえてもらおうと入れた言葉です。その動きまでをデザインしてくださることが大事だし、道路と民地の関係を考えたら、その両方をセットでデザインしないといけない。どんなに建物が美しくてもその先の道路がしょぼいとまずいし、逆に道路だけ立派でも民地側が美しくないとバランスが悪い。それを上手につないでデザインするには、人々の動き方を見ることから始まるだろうと考えています。そのあたりを書き込んだつもりです。少し書込が足らない部分もあるでしょうが、要素は全部入れたし、少し例題になるようなキーワードも幾つか入れました。

 昔の(都市の)イメージでは、交通は車と歩行者空間だけでした。しかし、今の都市はそこを動くバスとか、今流行りのLRTなどの乗り物もあります。それに対して思うことは、それぞれの乗り物に関して独立した計画は無意味だということです。例えば、路面電車をいくら格好良く作っても、電停から建物までの歩行者動線が悪ければ、使ってもらえないのです。そこをセットで考える発想がこれからのまちづくりには必要になってくるのです。

 それと僕が今、気になっているのは、手段と目的の混乱です。これは、路面電車や地域のコミュニティバスを作ろうとしている人たちが陥りやすいことですが、つまりそうした交通システムが入ればいいと言ってしまう人が多い。そうじゃなくて、そうした交通システムを人びとが使ってくれることで、町が生き生きするのが目的なんです。こういう発想になかなか至っていないと思います。その部分をきちんと考えて欲しいという思いも込めて書きました。

■行政、事業者、市民がなにをすべきか

前田:

 そういう都市交通戦略、あるいは都市交通を考える一番の主体は誰になると思われますか。

中村:

 基本は行政と市民、そこに関わる運輸事業者と分けるのですが、やっていて思うのは基本的に行政が公共的空間の管理をするから行政が主役になるものの、行政の中にもいろいろあって、なかなか物事がスムーズにいかないことです。例えば、道路管理者と交通管理者を分けないといけない。道路を管理する人と、交通の法規、信号機や規制をする人との間がしっかりしてない場合が多々あります。だから、主役という意味では行政が総力戦でやってくれるのが大前提。

 その上で、市民が出てくるのですが、広域圏の交通になると市民の意見をそのまま反映するのは難しいと思っています。というのは、市民は自分の生活空間での意見は出てくるけど、地域全体でどうあるべきかに関しては客
的な意見を出せというのも酷な話ですし、それを市民に期待するのは無理があると思っています。とは言え、自分がこうしたいということを市民に考えてもらうことは必要だし、それはある意味学習、訓練の場が必要なので、それをクリアした上で市民とのやり取りもあるだろうと考えます。

 もうひとつ難しいアクターが運輸事業者、つまりバス会社、鉄道会社です。これまで公共と言いながら民営であった。この「公」と「民」の間の行き違いはなかなか難しいんです。ある時は「民間だから」と言い、ある時には「公共性があるから」と言う。それぞれの人が都合良く使っていた場面もあったと思います。そこをもう少し堂々と整理して行くべきだと思います。ヨーロッパではその辺を割り切っていて、「公がやることはここ、民がやることはここ」ときちんと分けられています。日本もそういう整理をしていく時代でしょう。

 隣の韓国のエピソードなんかは面白くて、ある時ソウル市の市役所がバスの役割をどどんと決めたんですよね。路線、車輌、サービスの中身を全部公と民に分けてしまったのです。交通サービスをいかに安全にやるか、それをチェックするのは公の仕事なんです。そういう整理がもう世界では始まっているのですから、日本でもそっちの方向に動くことを期待しています。

前田:

 ありがとうございます。

「都市交通戦略のあり方」を語る(中村文彦氏)

『都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ』に寄稿いただいた中村文彦さんに、主題とされたモビリティデザインについてお聞きしました。

交通システムは作っておしまいではなく、使われることが大切、「路面電車や地域のコミュニティバスを作ろうとしている人たちが陥りやすいことだけど、そうした交通システムが入ればいいと言ってしまう人が多い。」「そうじゃなくて、そうした交通システムを人びとが使ってくれることで、町が生き生きするのが目的」、というお話は印象的でした。

http://www.gakugei-pub.jp/chosya/039naka/index.htm

都市計画 根底から見なおし新たな挑戦へ
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2501-9.htm
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
国交省「まちづくり計画策定担い手支援事業」

8月24日から第三次募集が始まっています。
http://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/ninaite/outline/index.html
http://www.mlit.go.jp/crd/city/plan/ninaite/index.html
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○季刊まちづくり32号(9.1発売)
『全ページ東日本大震災対応特集号』
【定価1680円(税込み)/B5判/128頁】
http://www.gakugei-pub.jp/zassi/index.htm

○『[東日本大震災原発事故] 復興まちづくりに向けて』好評発売中
A5,240P,1800+税
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1289-7.htm

藻谷浩介さん『地域再生』を語る

★著者に聞く
  藻谷浩介さん『地域再生』を語る

昨年の秋、まる一日をかけて中心市街地活性化など地域再生に熱弁をふるっていただきました。その記録をまとめ、現在、校正していただいています。

4月8日のインタビュー後、復興会議などの公務が激増し滞っていましたが、そろそろ再始動。ご期待下さい。

http://www.gakugei-pub.jp/chosya/033mota/index.htm

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
○季刊まちづくり32号(9.1発売、予約受付中)
『全ページ東日本大震災対応特集号』
【定価1680円(税込み)/B5判/128頁/ご予約分は送料無料】
 http://www.gakugei-pub.jp/zassi/zigou/32yokoku.htm

○『[東日本大震災原発事故] 復興まちづくりに向けて』好評発売中
A5,240P,1800+税
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-1289-7.htm

藻谷浩介さん『地域再生』を語る

『藻谷浩介の地域再生塾』(仮)校正中の藻谷さんを訪ね、東日本大震災原発事故に見舞われた今、街と暮らしの再生の方向をお尋ねしました。
人口が減っていくこれから、これまであまり考えてこなかった暮らす場所の問題こそ重要だ、どこに住み、どう暮らすのかが問われていると強調されていました。
(2011年4月8日)聞き手:前田裕資(編集部)

http://www.gakugei-pub.jp/chosya/033mota/index.htm

藻谷浩介さん
(株)日本政策投資銀行地域振興グループ地域支援班参事役、NPO法人 コンパス地域経営支援ネットワーク理事長。2000年頃より地域振興の各分野で精力的に研究・著作・講演を行う。2010年度より現職。東日本大震災復興構想会議検討部会など公職多数。主な著書に『実測!ニッポンの地域力』『デフレの正体』

前田:

 昨年秋に丸一日を使って藻谷先生に講演をしていただきました(セミナーの記録はこちら)。もうすぐそれをまとめた本が出版できますが、この時期、この本をどういう人に何のためにお読み頂きたいか、コメントいただければと思います。

■大震災が教えていること

藻谷:

 21世紀が始まってしばらく経ちましたが、まさに日本が、そしてそれに続いて世界が大きな転換期に入っています。たまたまそれを天も承知しているかの如く、大震災の不幸が日本を襲いました。多くの被災された方はもちろん、誰にとっても人ごとではない大きな出来事になっています。今、日本が問われているのは、我われはどのように住んでどういう風に暮らすのかということです。何をして暮らすのかじゃなく、どこで暮らしていくのかまで大きく問われているのです。

 それは、これまであまり考えてこなかった暮らす場所の問題です。どこに何を置くと、何も問題なく幸せに暮らせるのかが問われているのです。

 人口が倍に増えてきた戦後の半世紀は、もう手当たり次第に田んぼをつぶし山を崩し海を埋めて、建物や施設をばらまいてきました。これから先、百年をかけて人口が半分に減ると思われるこの時代に、果たしてどうやってそうしたやり方の手仕舞いをしていくのか。並べ直して、どこに住んでどこで働いてどう暮らしていくのが幸せで楽しいのかを問われる時代になってきたのです。

 人口がどんどん増えていって、収入も増えていき、それが楽しいとする時代は終わりました。これまでに溜めてきた物の中で本当に価値のあるものは何なのか、どうやって子孫に残すのかを考えないといけない。お札の形で残すか。いやそうじゃなくて、物として残さないといけない。でも物だっていつなくなるか分からない。どういう街として残していけばいいのか。

 今回の震災でも、古くからの街が驚くほどの強靱さで残っている場所が多々あります。これは、先祖が我われに残してくれた贈り物なんですね。こういう街をこれからの子孫に残していくために、まさに今がそれを考えて、行動するタイミングなんです。

 人口が半分になった百年後の日本に、非常に美しい田園と、コンパクトシティ&タウンズが織りなす国にしていけるか。そういう気持ちを1人でも多くの人に共有してもらいたいと思います。

■中心市街地の意味

前田:

 今おっしゃったことの中で、町の中心部の持つ意味は今まで以上に大きくなるでしょうか。

藻谷:

 戦後の人口が2倍に増えていく中で、我われは町の中心だけに住んでいられなくなったわけです。中心にはお店とオフィスだけ残して、家はなるべく遠くに移して車で中心部に通いましょうというやり方をしてきたのです。大きい町ほどそういう作り方をしてきましたね。

 ところが、人口がどんどん減っていく時代なのに、75歳以上の後期高齢者だけが全国どこの地域でも増えています。特に大都会で激増しています。そういう方々が住んでいる場所が町の中心部から遠く離れて、近所には病院も店もありません。さあ、どうやって暮らしていこうという深刻な問題になっているのです。

 こういう時代に、中心市街地はどんな役割を果たすべきなのか。店とオフィスが並んでいる状態だけでいいのでしょうか。違いますよね。歩ける範囲に人が住んで、その近くに店もあり、働く場所もあるけれども、それ以上にみんなで集まって交流してしゃべって、ゆっくり時間が過ごせて人と知り合える、病院にもすぐ行ける、そんな空間が必要だということをみんなが感じています。

 ショッピングセンターがあるじゃないかという声があります。しかし、そこは車でないと行けないし、ほとんどの人にとってはそのためにわざわざ行かないといけない場所なんです。しかも、行った以上は何か物を買うことが行動の中心になる。そうじゃなくて、物を買わなくていいんだけれど、歩いていて人と挨拶が出来て、四季折々が感じられるそういう空間がいいんです。人は公園以外にも、賑わっている町中が欲しいんですね。これはそうした町を経験したことがない若い人たちにとっても同じなんです。人間はそういうものを求めるんです。

 これから、みんなが歩いて暮らせる町に住んで、いろんな用が徒歩圏で足りて、いろんな人と交流できる町なか、これを中心市街地に再建できる初めてのチャンスが来るんです。今から50年前にこれを言っても、人口が増えていくという趨勢の中では一蹴される絵空事だったんです。町なかには住めませんでした。

 ようやく町なかに住むことが大都会でも可能な素晴らしい時代に入っていくんです。こういう時代に生きていることを僕らは非常に幸せだと思わなければいけない。そして、こういう時代をどう生かすかを一緒に考え、行動していきましょう。

前田:

 ありがとうございます。

■イベント情報

◎学芸セミナーin東京「経済成長が無ければ、僕たちは幸せになれないのか」
藻谷浩介×山崎亮 対談/7月12日(火)/19:00〜/東京外苑前
http://www.gakugei-pub.jp/cho_eve/1107yama/index.htm

敷田麻美さん『地域からのエコツーリズム』を語る

発売から3年、自分たちでもやれると思ったという読者の声が一番多く、それが嬉しかったとの事です(2011年4月28日収録)。 聞き手:前田裕資(編集部)

http://www.gakugei-pub.jp/chosya/030siki/index.htm

敷田麻美さん
北海道大学観光学高等研究センター教授、博士(学術)。高知大学農学部卒業後、1983年より石川県水産課勤務。その間にオーストラリア・ジェイムスクック大学大学院留学、金沢大学大学院社会環境科学研究科博士課程修了。1998年に石川県庁を退職後、金沢工業大学工学部、同情報フロンティア学部を経て、2007年より現職。

■地域から創り出すことが本書の狙い

前田:

 『地域からのエコツーリズム』を執筆された敷田先生に、この本の狙いと、ご自身が想定された読み手、さらにこの本の活用法などについてお伺いします。

敷田:

 この本について簡単に紹介させていただきます。この本の前後にもエコツーリズムについて書かれたものが複数出版されていますが、この本には他の本にはない特徴があります。最大の特徴は、エコツーリズムを地域で考える、地域からエコツーリズムをつくり出し、推進していくのだという視点で書いているということです。エコツアーの解説やエコツーリズムの先進地の説明がある本は多いのですが、どうしたらエコツーリズムを地域からつくり出せるのかを重点的に書いた本は、今もこの一冊だけと自負しています。

■色々な役立てかたをしていただける

 そのほかにも、例えば「エコツアーって実際にはどんなものなんだろう」と思った人の疑問にも十分対応できる本に仕上がっています。第1章には、北海道のエコツアーの事例を分かりやすく載せて、エコツアーを疑似体験しながら本の内容に入っていただけるよう工夫しています。

 また、ツアーを作る側にいる人にとっても参考になる本です。エコツアーの作り方について明確なテキストがあるわけではありません。この本の最後の章で、どうしたらエコツアーを地域で作っていけるのかを、なるべく分かりやすく書きましたので、作り手・参加者の双方の参考になるはずです。

 もうひとつお薦めしたい特徴があります。それは、ツアーを作るだけで終わらせず、地域でエコツアーを使ってどのように環境の保全と地域づくりを進めるのか、さらにそれを活用した観光をどのように推進してゆくのかという流れを書いている点です。エコツーリズムが持っている理想的な姿をどう維持していくか、それを恒常的に続けていくために必要なことは何なのかというマネジメントの重要性が書いてあります。作りっぱなし、提案のしっぱなしではないところにこの本の特徴のひとつがあると思っています。

 さらに、実際のエコツーリズムを推進するにあたっては地域の実例が有用です。そこで、二つの事例を取り上げて解説しています。北海道の事例は非常にリアルで、読んでいただくことでみなさん自身がエコツアーを作る、推進する当事者になった視点で学んでいただけると思います。

 この本は単に、みなさんが学ぶために一読すれば良いという類の本ではなく、エコツーリズムを推進するときに常に身近に置き、困ったときや悩んだときには再び手にとって確認し、またこの発想を応用できるのではと新たな気付きを喚起していただくための本だと思っています。ぜひ、手にとってお読み下さい。

 また、この本を読んでお感じになったことやご意見・ご感想があれば、ぜひ私たちに伝えていただき、それが可能ならば私たちもみなさんと一緒にエコツーリズムの推進を進めていきたいと考えています。よろしくお願いします。

■自分たちもやれると思っていただけたのが嬉しい

前田:

 この本が出てから数年経ちますが、この間のエコツーリズムの進展とかこの本の反響について教えてください。

敷田:

 出版とほぼ同時にエコツーリズム推進法が施行されまして、エコツーリズムが以前より身近な言葉になりました。ですが、まだまだエコツーリズムを知らない、この考え方を知らないために、地域の自然をどういうふうに活用しながら保全したらいいのか分からず、迷っている地域の人も多いのが現実です。そういう面で、エコツーリズムをもっとみなさんに伝えていく必要があると思います。

 この本を読んだ方からの感想はいくつかありますが、一番多かった感想は「自分たちでもやれると思った」というもので、これには書いた私たちも一番喜んでいるところです。

前田:

 どうもありがとうございました。

森重昌之さん『観光の地域ブランディング』を語る

観光まちづくりへの取り組みに問題を感じている人たちに、持続可能な観光の具体的なモデルを示したかったと語られました(2011年4月28日収録)。
聞き手:前田裕資(編集部)

http://www.gakugei-pub.jp/chosya/031mori/index.htm

森重昌之さん
阪南大学国際観光学部国際観光学科専任講師。北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院観光創造専攻博士後期課程/株式会社計画情報研究所を経て現職、著書に『地域からのエコツーリズム−観光・交流による持続可能な地域づくり』(共編著)学芸出版社、2009年

■持続可能な観光の具体的なモデルを示したかった

前田:

 『観光の地域ブランディング』をお出し頂いた森重先生に、この本の狙いとどういう方に読んでもらいたいかをお聞きします。

森重:

 この『観光の地域ブランディング』の中で、「関係性モデル」というものを提示しております。これは、地域にある資源をどういう風に生かしていくか、単に資源を生かすだけでなく、資源をどういうふうに地域の人々に伝えていくか(つまり、ブランディングからマーケティングへということです)、最終的にはそれで観光客に来ていただくということを提示しました。

 通常の観光では、お客さんが来て収入が増えたということで満足することが多いのですが、この本ではそれだけでなく、増えた収入がどういうふうに地域に還元されるかということまで考えました。地域社会に還元されることで地域資源の価値が高まり、さらに地域そのものの価値も高まっていくという、ひとつの循環をするモデルを本の中で描いています。

 関係性モデルの中でぐるぐると循環していくことが、今、観光の分野で考えられている「持続可能な観光」とか「サステイナブルツーリズム」の方向を示す一つではないかと思います。そういう意味で、サステイナブルツーリズムの具体的なモデルをこの本の中で示すことが出来たと思っています。

■取り組みに問題を感じている人に読んで欲しい

 この本をいろんな方に読んで頂きたいと思っていますが、一つはサステイナブルツーリズムや観光まちづくり、着地型観光を実際に経験されている方や、これから始めようと考えている方に読んでいただきたいと思っています。特に、今、観光に取り組んでいるけれどもうまく進まないと考えていらっしゃる方には、それぞれのプロセスのどこで停滞しているかを考えるときに、この本は非常に参考になるだろうと思います。大事なことは、必ずしも地域資源を作るところから始めなくてもいいということです。どこからでも、持続可能な観光は始められることが特徴です。

 この本の中では海外も含めた8つの事例を紹介しています。その中には、地域にある資源に磨きをかけてブランド化して売っていく事例もあれば、地域の人は気づいてないけれど、地域の外にいる人たちがこれはいいねと評価したことから始まった持続可能な観光も紹介されています。ですから、どの部分からでも始められるのです。観光のプロじゃない人でも始められる、誰でも始められるのが、着地型観光であり持続可能な観光の面白いところであり、メリットです。そういう意味では、観光のプロ以外のいろんな方に読んでいただければと思っています。

標津町での経験

前田:

 この中で、想い出のある事例はございますか。

森重:

 私自身は、北海道の標津町という道東にある町の事例が面白かったと思っています。ここは秋鮭が採れる産地なのですが、本来鮭は漁業者にとって大事な資源ではあるけれど、地域の人にとってはそれほど関わりのあるものではなかった。しかし、観光を通じて酪農家や役場に勤めている人、普通に町で暮らしている人たちも、鮭が地域の大事な資源だと認識できるようになりました。

 それは外からの目線でそういう認識ができるようになったんです。もちろん、それまでも鮭が地元の資源だとはわかっていたんですが、観光を通じて町にやってきた人たちが「いいね」「素晴らしい」と誉めてくれたことで、地元の人達がより自慢に感じたり、誇りを感じたりするようになったんです。町の人たちがそういうふうに感じることで、観光もより進化するようになりました。観光が進化するとは、単に観光がうまくいって収入も増えましたねということじゃなくて、その地域に暮らすこと自体が誇りあることだと感じたり、生活することで豊かさを感じたりするようになることです。その変化が如実に感じられたという点で、標津町の事例は面白いと思います。

 もちろん、こんなふうに観光が進化することで人びとが豊かさを感じるようになった例は標津に限らず、8つの事例それぞれに見られる共通した出来事です。他の地域で活動されている皆さんも、このモデルを見て同じように感じられるのではないかと考えています。

前田:

 ありがとうございました。

安田亘宏さん『食旅と観光まちづくり』を語る

昨年に本書を書かれ、今年は観光と農商工連携をテーマに次作を執筆中の安田さんに、その狙いをお聞きしました(2011年3月16日収録)。
聞き手:前田裕資(編集部)

http://www.gakugei-pub.jp/chosya/029yasu/index.htm

安田亘宏さん
西武文理大学サービス経営学部教授。1977年JTBに入社。旅行営業、添乗業務を経験後、実務責任者およびJIC旅の販促研究所執行役員所長を歴任。2010年4月より現職。NPO法人日本エコツーリズム協会理事、日本地域資源学会常務理事。

■キーワードは「地域の食」

前田:

 先生には、2010年の6月に『食旅と観光まちづくり』をお書き頂きました。ここでは、この本の狙いと、どういう人にどんなふうに読んでいただきたいかをお話しいただきたいと思います。

安田:

 今日本のあちこちで、疲弊しているというか元気のない地域が多くなっています。少子高齢化、人口減少などのしわ寄せが来ているのが地域で、そうした地域に元気になってもらいたいと思いからこの本を書き上げました。

 その方法はいっぱいあろうかと思いますが、私は専門のツーリズムの観点から、旅行、観光で地域に元気になってもらおうと思いました。地域で交流人口や交流時間を増やして、まちづくりや地域の活性化に繋げていただきたいと思い、そのお手伝いになればと考えました。

 その中で何が大事かというと、キーワードになってくるのが「地域の食」です。もちろん「B級グルメ」で有名になった地域もいくつかありますが、それだけじゃなくて食は必ずどんな地域にもある、もっとも地域らしい観光資源です。「ウチには観光資源がない」と言っている地域でも、その地域らしい食だけは必ずあります。それを磨く、あるいは発掘して観光資源にして、多くのお客さんに来てもらい、食べてもらう。「美味しい」と言わせ、また来てもらう。そんなまちづくりが出来たらいいなと思ったのが、この『食旅』の最大の狙いですし、私の思いです。

 ですから、大きな観光地の人はむろん、全く観光に縁のなかった地域の人たちにも一度読んでいただきたいと思っています。観光の関係者には当たり前のことなんですが、観光関係の人だけでなく、地元でまちづくりの論議をやっている人や、農漁業に従事している人、お店をやっている人にも読んでいただきたいと思います。

 実を言うと、観光客は地域らしい食をみんな求めているんです。だから、地域の人たちみんなが頑張れば、多くのお客さんを呼べるんです。そんなことをこの本から分かって貰えればと思っています。必ず地域の豊かな食というのはあるのですから。

 ただし、あるというだけでは観光には結びつきません。それをカタチにしてマーケティングしていく必要があります。そのプロセスを読んで頂く方に分かって頂けたら嬉しいと思います。

 現実にそうすることで成功した事例もあります。もちろん大きい成功事例もあれば、小さなものもあるのですが、それぞれのまちに相応しいまちづくりにやっていただけたらと思っています。

 『食旅』も最初の頃は、カニツアーのように冬に何もないような、観光地、温泉地に新鮮なカニだけを食べに行くようなものでした。そこから『食旅』が始まり、さらにどんどん大きく広がっていきました。今は、高級食材や地元でしか食べられないものばかりでなく、普通に見られる食材も加工して売り方を工夫したり、地域で食べる場所を作ったりといろんなやり方で観光客を呼んでいます。そんなことも知って頂ければ、嬉しいです。

 今私が思っているのは、小さなまちでも、農業と漁業、飲食業の人が一緒になって考えることで新しい『食旅』が生まれる事の可能性です。ごく普通の素材だけど地域らしい、そうしたものから新しい食ができ、そこから加工品ができ、それを売る場所を作ったり、売り方や食べ方を工夫したりすることで、まちそのものに活気が出てきます。そんな元気なまちが今、いっぱい出てきています。

 次の本では、食旅と農商工連携あるいは6次産業の話を書いてみたいと思います。そこでは小さなまちでもできるまちづくり、一つのプロジェクトから生まれるまちづくりの成功事例を紹介しながら、みなさんに報告できればと思っています。

農商工連携が成功の鍵

前田:

 高級な食旅とされるカニ料理とか京料理、B級グルメでもナンバーワンになっているような所へ食だけを目ざすお客さんが来るというのはよく分かるのですが、普通のまちの場合は食が一番大事な観光目的になるということはあまり多くないのじゃないかという気もします。そのあたり、消費者の動向というのはどうなっているのでしょうか。

安田:

 そういう捉え方の人もいますが、そんなことはないですよ。実際にその地域の食だけを食べに、買いにドライブしたり、旅行したりする人はいっぱいいます。もちろん、京都に来たら京料理も楽しむけどお寺のひとつも行くのは当然だと思います。観光資源の組合せも考える必要はあります。組み合わせるときも、組合せの中で昔は忘れられていた食を観光資源にして組み合わせることで、観光資源がさらにパワーを持っていくんだという捉え方をしたら良いと思います。

 もちろん食の力だけで食の観光地になっている事例は世界にいっぱいあります。日本にも徐々に生まれてくるでしょう。観光資源の組合せはとても多様なんです。多様なんですが、その中に食の観光資源があるという事実を知って、それを磨けば成功する可能性があるという事実を皆さんに知って頂きたいと思っています。

 その時も、「食の観光資源」とは食べ物そのものではなく、食べ物にまつわる物語や食べる空間、食べる雰囲気も含めた食というものです。いわば、地域の食文化が観光資源になるのだということを分かって貰えたらと思います。

前田:

 そういう意味では、農商工連携と食旅というのはい
組合せですね。

安田:

 可能性はものすごくあります。実を言うと、決して仲の良くなかった農業と漁業と観光が結びつくと、地域はものすごく大きな力になるんです。そうした成功例はいっぱいあります。そこがこれからの一番のポイントだと思います。観光まちづくりを観光関係者だけで取り組むのではなく、みんなでやればまちづくりになるのです。

 この農商工連携の一番良いところは、やり始めたらまちが一体化していくことなんです。一体化しないとまちづくりは出来ないでしょう? これはどの本にも書いてあります。農商工連携が出来ると、自然にまちは一体化するんですよ。そうすれば、観光客もまちに訪れた時に、「このまちは私たちを迎え入れてくれている」と感じます。最大のおもてなしがまちぐるみで出来るようになっていくんです。それが、農商工連携のまちづくりだろうと思います。

前田:

 どうもありがとうございました。次作を期待しております。